公開講演会「シャーマニズムを真剣に受け取る」—宗教人類学の課題と展望-
INFORMATION
シャーマンとは、変性意識の状態に入ってこの世とあの世、目に見える世界と目に見えない世界を自在に行き来し、占いや託宣、病気治しなどを行う職能者のことである。人間であるシャーマンが非—人間としての霊的存在と霊的な力を統御することで人間および人間社会に深い影響をもたらす宗教文化的な制度が、シャーマニズムに他ならない。シャーマニズムは過去の遺物ではなく、今日でも世界中で広く行われている。シャーマンによる儀礼実践はこれまで、シャーマンと霊的存在との争いや交渉が人間同士の社会関係のモデルによって隠喩的かつ象徴的に説明されるか、もしくは、そうした心的表象の次元が不問のまま、社会的な動向との関係において分析される傾向にあった。それに対して、シャーマンが霊界へと飛翔し、邪霊から病者の霊魂を取り戻す場面で、人々がまさにそこで起きていることを心の中に思い抱くという面には、あまり注意が払われてこなかった。人々は思考に先立って世界に直接触れながら、「世界—内—存在」として、シャーマニズムそれ自体が立ち上がる情況のうちにいる。近年のいわゆる存在論の人類学は、アニミズムやシャーマニズムを含む宗教文化的な実践を「真剣に受け取る(taking seriously)」という現象学的な人類学のアプローチを重んじる。シャーマニズムに関わる人々の世界への能動的ないしは受動的な参加を「真剣に受け取る」ならば、シャーマニズムを新たな光の下に照らし出すことができるだろう。本公開講演会では、シャーマニズムの存在論を問う視座から、日本、モンゴル、マヤのシャーマニズムを取り上げて再評価し、宗教人類学の課題と展望を示したい。
※使用言語:日本語(一部モンゴル語からの通訳あり)
詳細情報
名称
内容
発表1 佐藤 壮広 氏(本学兼任講師、宗教情報センター研究員)
発表2 都馬 バイカル 氏(桜美林大学リベラルアーツ学群准教授)
発表3 実松 克義(本学名誉教授)
発表4 チロンバートル 氏(モンゴル国立大学人文科学部門教授、本学招へい研究員)
対象者
※申込不要、入場無料
主催
備考
佐藤 壮広 氏
青森県生まれ。修士(文学)。現在、本学コミュニティ福祉学部、明治大学大学院情報コミュニケーション研究科ほか非常勤講師、宗教情報センター(CIR)研究員。本学大学院文学研究科組織神学専攻博士後期課程 満期退学。(財)国際宗教研究所・宗教情報リサーチセンター研究員を経て、都内諸大学にて非常勤講師。1997~1999年に沖縄県那覇市に居住し民間巫者「ユタ」の調査・フィールドワークに従事。沖縄本島、青森県下北半島ほか日本国内のいわゆる民俗社会を中心とした宗教人類
学、比較宗教学、表現文化論を専門とする。主な著書に『沖縄民俗辞典』吉川弘文館 2008年(渡邉欣雄、岡野宜勝、塩月亮子、宮下克也との共編)、近年の社会活動に、ケーブルテレビ・としまテレビ「としま情報ライブ」の地域文化紹介コーナー「まちをよむ」担当ナビゲーターとして出演など(2017年2月から月1回程度)。
都馬 バイカル 氏
1963年、中国内モンゴル自治区に生まれる。内モンゴル師範大学大学院修士課程(歴史専攻)、東洋大学大学院博士課程(インド哲学・仏教学専攻)修了。文学博士。桜美林大学キリスト教研究所研究員、東洋大学東洋学研究所研究員を併任。日本モンゴル学会会員。「モンゴルの歴史と文化」と「遊牧文化論」などの授業、モンゴル国で「モンゴル環境研修」、内モンゴル自治区で「遊牧文化フィールドワーク」の研修授業も担当。主な論著「モンゴル帝国の寛容性~ウィリアム・ルブルクの「東方諸地域への旅行」に見る異宗教観」(日本語)、「モンゴル国のキリスト教の過去と現在」(日本語)、「モンゴルのオルドス地域におけるキリスト教の過去と現在—ウシン旗の「エルケウン」について」(日本語)、「オボー信仰と環境保護—内モンゴル自治区正藍旗を中心として」(日本語)、『サイチンガ作品』(ウイグル式モンゴル文字)、『モンゴルのためにつとめた詩人』(キリル・モンゴル文字)等。
チロンバートル 氏
1952年生まれ。ロシア科学アカデミー・シベリア部門博士。現在、モンゴル国立大学人文科学部門教授。専門は、言語学、外国語学、宗教研究。著書・論文に、『日本語ーモンゴル語ことわざ辞典』(共著)、「なぜモンゴルは仏教を受け入れたのか」「ロシアとモンゴルのドゥルベット語」(以上、モンゴル語)、“The Idea of the Spiritual World among the Asian Shamans”など。