公開セミナー「先住民は多国籍企業と共存できるのか:フィリピン・ミンダナオ島の先住民の声を聴く」
INFORMATION
フィリピン南部のミンダナオ島は、輸出用鉱物資源、農産物などの一次産品の主要供給地である。例えば、フィリピンのニッケル鉱石生産量は世界第一位であるが(2015年現在)、その主要鉱山の一つは同島北スリガオ州にある。またフィリピンの輸出用バナナは輸出額ではココナツオイルについで二番目に大きな農産物であるが、そのほとんどが同島で生産されている。いずれも主に多国籍企業によって生産、流通、販売が行われているこれらの第一次産業は、現地に雇用を生み出す一方、深刻な環境破壊や健康被害を引き起こしており、とりわけ経済的に困難な状況におかれている同島の先住民の暮らしに大きな変化をもたらしてきた。
本セミナーでは、尾本恵市(東京大学名誉教授、先住民族問題研究会代表)氏らの集団遺伝学的調査によりフィリピン最古の先住民(First People)の末裔であるとの仮説が発表されたママヌワ人のリーダーのカイン・フクマン氏と、同じくママヌワ人でセントポール大学(於スリガオ市)で教鞭をとるラリー・ディロ教授を招き、ニッケル鉱山開発が彼らの先祖伝来の領域にどのような変化をもたらしたかについて、ご講演いただく。加えて、ママヌワ人の人類学的調査を行ってきた尾本氏と、高地栽培バナナ農園がティボリ人に与えた影響について聞き取りを行った石井正子所員が、報告とコメントを行う。
登壇者
東京大学名誉教授、先住民族問題研究会代表
尾本 恵市 氏
専門は自然人類学・集団遺伝学。1960年代よりアジアの狩猟採集民、特にアイヌとフィリッピンのネグリト集団の遺伝的起源を明らかにするため研究してきた。最近では先住民族の人権問題を中心に調査および啓蒙活動を行っている。著書に『ヒトと文明:狩猟採集民から現代を見る』(ちくま新書、2016年)、『ヒトはいかにして生まれたか:遺伝と進化の人類学』(講談社学術文庫、2015年)など多数。
ママヌワ人リーダー
カイン・フクマン 氏
フィリピン・ミンダナオ島北部の狩猟採集民ママヌワ(Mamanwa)人の地域グループ、アンパントリムトゥ(Anpantrimtu)の伝統的指導者。ママヌワ人はフィリピン最古の先住民である。
セントポール大学[フィリピン・スリガオ市]教授
ラリー・ディロ 氏
ミンダナオ島北部スリガオ市のセント・ポール大学教授。専門は先住民族の人権問題。本セミナーでは、フクマン氏の補佐役としてママヌワ人の現状と人権問題について報告する。
アジア地域研究所所員、本学異文化コミュニケーション学部教授
石井 正子
詳細情報
名称
内容
カイン・フクマン 氏
ラリー・ディロ氏 「ママヌワ人の先祖伝来の領域とニッケル鉱山開発」(仮)
石井正子 「コメント:高地栽培バナナ農園とティボリ人の経験をふまえて」
対象者
申し込み
- 事前申し込み 不要
- 参加費 無料