公開講演会「欧州とアジアにおけるEVシフトと自動車産業」
INFORMATION
本公開講演会は、立教大学経済研究所プロジェクト研究「コロナ危機とEU統合の再検討」、及び立教SFR共同プロジェクト研究「欧州におけるEVシフトと生産・インフラ・ネットワークの再構築と日系企業への影響」の活動の一環として行われる。
2019年末、EUは、新たな成長戦略として欧州グリーンディールを打ち出し、COVID-19危機を契機として合意されたEU共同債に基づく復興基金の中核に位置づけられた。2050年ゼロカーボンを実現するべく、2021年には国境炭素調整メカニズムの提案を含む一連の法令パッケージ(Fit for 55)が追加され、EUは脱炭素化への歩みを速めている。
EUは、これまでも温室効果ガス削減に取り組んできたものの、交通部門では内燃エンジンが主であったため、その削減は遅々として進まなかった。この状況を打破するために、EUは、パリ協定以降、自動車の電動化(EV)を含むクリーン・モビリティ戦略を強化し、それは欧州グリーンディ-ルの構成要素の一つとなり、2020年12月に「持続可能なスマートモビリティ戦略」を打ち出している。今や、EVは交通部門の脱炭素化にとって欠くことのできないものとなっている。
そして、現在、その先頭を走っているのが、EUと中国である。自動車産業の電動化は、インテグラル型からモジュラー型へ製品アーキテクチャのシフトを伴い、バリューチェーン全体の変革をもたらす可能性がある。自動車産業は「産業の中の産業」と呼ばれるように、他の産業への波及効果が大きい。
そこで、「自動車産業の電動化の移行期におけるバリューチェーンと企業間分業~日中韓の比較~」(科研費基盤研究(C)20K01856、研究代表:李 在鎬)に取り組んでいる研究者の方々の協力を得て、公開講演会「欧州とアジアにおけるEVシフトと自動車産業」を開催する。
講演者
司会・コーディネーター
本学経済学部教授
遠山 恭司
報告者
本学経済学部教授
蓮見 雄
名古屋学院大学名誉教授
家本 博一 氏
ポーランド社会経済研究センター訪問研究員、南山大学教授、名古屋学院大教授を経て現職。ポーランドを中心として中東欧諸国経済を比較経済体制の視点から研究。中東欧諸国はEU加盟後、欧州における自動車産業の一大拠点となったが、EV化にともないバッテリー生産への転換を図っており、近年は欧州バッテリー同盟と中東欧諸国経済への影響を研究している。主な研究業績として、「欧州委員会「2020年電池規則案」と車載電池大国ポーランドへのインパクト」『ロシア・ユーラシアの社会』(第1060号、2022年)、「欧州バッテリー同盟EBAの特徴・性格と今後の課題—『参加企業動向調査』の結果を踏まえて—」『同志社商学』(第72巻6号、2021年)、オスルンド『資本主義はいかに築かれたか』(文眞堂、2020年、共訳)、『中欧の体制移行とEU加盟下』(三恵社、2004年)、『ポーランド「脱社会主義」への道』(名古屋大学出版会、1994年)
広島市立大学国際学部教授
李 在鎬 氏
韓国延世大学卒業後、国費留学生として京都大学大学院経済学研究で組織経営分析論を専攻。星城大学講師・准教授、京都橘大学教授を経て現職。主に日本及び韓国自動車産業のサプライヤーシステムの構造論、機能論、発生・進化論を研究している。主な研究業績として、“Adaptation strategies of Hyundai motor group to the green shift in automotive industry post Covid-19”-in Anshuman Khare, Nobutaka Odake , Hiroki Ishikura eds., Japanese Business Operations in an Uncertain World, Routledge Advances in Management and Business Studies, 2021、「自動車産業のセミ・グローバル化におけるグローベル標準化と現地適応-トヨタブラジルの事例-」『經濟論叢』(第194巻、第2号、2020年)。
京都大学文学研究科准教授
ステファン ハイム 氏
ストラスブール大学助教、カシャン高等師範学校研究院などを経て現職。経済社会学の観点から、戦後以来アジア、米州、欧州自動車産業の国際比較を行い、各産業構造、企業間関係、労働状態の変容を中心に研究。主な研究業績として、“The Japanese Automotive Industry Since 2000: Causes and Impacts of Growth Disparities New frontiers of the automobile industry : exploring geographies, technology, and institutional challenges”、-in Covarrubias V., Alex, Ramírez Pérez, Sigfrido M.eds., New frontiers of the automobile industry : exploring geographies, technology, and institutional challenges, Palgrave Macmillan,2020, 「中国自動車産業における新エネルギー自動車市場の発展」『經濟論叢』(第194巻、第2号、2020年)。
豊田汽車技術中心(中国)有限公司
垣谷 幸介 氏
主な研究業績として、『中国市場における日系自動車メーカーの競争力分析-トヨタ自動車の事例を中心に-』(京都大学大学院経済学研究科博士学位論文、2020年)。
鹿児島県立短期大学学長
塩地 洋 氏
京都大学大学院経済学研究科教授を経て現職。International Federation of East Asian Management Associations(東アジア経営学会国際連合)会長(2019年~)。自動車産業の国際比較と新興国企業論を専攻。主な研究業績として、『東アジア優位産業-多元化する国際生産ネットワーク』(中央経済社、2020年、共編著)、“Examining the Realignment Strategies of Automotive Production basses in Southeast Asia: the case of Japanese Automakers,” International Journal Automotive Technology and Management Vol.18, No.4, 2018.
討論者
関東学院大学名誉教授
清 晌一郎 氏
財団法人機械振興協会経済研究所研究員、関東学院大学経済学部教授を経て現職。グローバル展開をとげる自動車産業の資材・部品調達システムについて研究。主な研究業績として、『日本自動車産業の海外生産・深層現調化とグローバル調達体制の変化-リーマンショック後の新興諸国でのサプライヤーシステム調査結果分析』(社会評論社、2017年、編著)、『日本自動車産業グローバル化の新段階と自動車部品・関連中小企業--1次・2次・3次サプライヤー調査の結果と地域別部品関連産業の実態』(社会評論社、2016年、編著)
詳細情報
名称
内容
「EUのクリーンモビリティ戦略と新産業戦略」
家本 博一 氏
「『欧州バッテリー同盟』と『電池規制』」
李 在鎬 氏、ステファン ハイム 氏、垣谷 幸介 氏、塩地 洋 氏
「車載2次電池のバリューチェーンと日中韓における企業間分業関係:中国での実地調査を踏まえ」
ステファン ハイム 氏
「中国におけるEVバッテリー産業の構造と展開」
垣谷 幸介 氏
「中国NEV市場と動力電池を巡るメーカー戦略の考察~トヨタ自動車の事例を中心に~」
李 在鎬 氏
「現代自動車グループの脱炭素化の移行期における両利きの経営」