公開講演会「ケアの倫理の源流へ——軋轢/葛藤/抑圧のなかのケア」
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コロナ禍で日本社会において、エッセンシャル・ワークとともに、ケア労働にも注目が集まり、文学や芸術分野においてもケアをめぐる議論がなされ、相互依存や脆弱性、あるいは被傷性といった人間観も、自律的個人との対比で幅広く論じられるようになった。他方で、ケアの倫理が、声も上げられず、声を発したとしても聞き取られず、搾取・抑圧され、時に暴力を被ってきたケアの担い手たち(≒女性)が、女性抑圧の元凶とさえいえるケア活動を分節化するなかで編み上げられた倫理であることが、どこかに置き去りにされていないだろうか。
本講演では上記の問題意識をふまえ、ケアをめぐる様々なパラドクス、ケア関係のなかに胚胎する暴力、葛藤、不平等などを見据えながら、ケアのロマン化に抗する、社会変革としてのケアの倫理を模索したい。
同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科教員
岡野 八代 氏
最近の論文に「ケア実践と政治——ケアの公正な配分から、民主的なケア実践へ」『年報政治学』(2022年6月公刊予定)、「ケア/ジェンダー/民主主義」『世界』(2022年1月号)、「ケアの倫理は、現代の政治的規範たりうるのか?」『思想』(2020年4月号)など。
主著に『ケアするのは誰か——新しい民主主義のかたちへ』(J. トロントとの共著、白澤社、2020年)、『戦争に抗する——ケアの倫理と平和の構想』(岩波書店、2015年)、『フェミニズムの政治学——ケアの倫理とグローバル社会へ』(みすず書房、2012年)など。
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