第54回社会福祉のフロンティア「ペットと福祉:高齢者と動物をめぐる課題に社会はどう取り組むか」
INFORMATION
ペットと暮らすことは、高齢者に生きがいや生活のリズム、社会的交流をもたらします。しかし一方で、高齢者が入院したり、自宅で介護を受けるようになった場合、また認知症で適切な世話ができなくなってしまった場合、ペットの世話をどうするのかなどさまざまな問題が生じます。
社会福祉は人間の幸福に資するものであるべきですが、その人の生活の質にペットが含まれている場合、支援者は何に対し、どこまで関わっていけるのでしょうか。
本シンポジウムでは、高齢者と動物をめぐる現在の日本の課題を明らかにし、それに対して社会はどう取り組むべきか、また、コロナ禍において飼い主とペットをどう支えるのかについても検討します。
講師
かわさき高齢者とペットの問題研究会代表
渡辺 昭代(わたなべ あきよ) 氏
川崎市条例に規定される「かわさき犬猫愛護ボランティア」に参加している中で2014年頃高齢者とペット問題の顕在化に気づき、2015年「かわさき高齢者とペットの問題研究会」を有志と共に立ち上げる。この問題は動物側のみならず、飼い主始め人側(特に行政、地域包括支援センター)との連携が不可欠であると痛感し、協働の働きかけを始める。動物との関りは子どもたちへの指導も必要と考え、動物介在教育・療法学会エデュケーターの資格を生かして川崎市動物愛護センターが実施する「いのちの教室」にも参加。昨年からかわさき高齢者とペットの問題研究会の「ニュースレター」を毎月発行し、地域包括支援センター、行政担当部署との連携を図っている。
朝日新聞記者
清川 卓史(きよかわ たかし) 氏
1993年朝日新聞社入社。厚生労働省の記者クラブなどで、介護保険や認知症、貧困・生活困窮問題の取材を続けてきた。人の福祉を考えるうえでペット問題が切り離せないことに気づき、2019年~20年に「介護保険とペット」に焦点をあてた記事を書いた。そのほか取材に取り組んできたテーマをキーワードであげると、「認知症の当事者発信」「ロストジェネレーション(就職氷河期世代)」「医療・介護の負担増」「中高年ひきこもり(8050問題)」「フードバンク」などがある。コロナ禍のなかでは、家や仕事を失った人への緊急対応・食料支援の現場に通っている。「困窮者支援とペット」も重要な問題だと感じる。介護福祉士、ファイナンシャルプランナー(CFP)。
九州保健福祉大学准教授
加藤 謙介(かとう けんすけ) 氏
愛知県生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了(博士(人間科学))。専門はグループ・ダイナミックス(社会心理学)。「高齢者施設でのアニマル・セラピー/ロボット・セラピー」、「地域猫活動における住民間の<対話>」、「要支援・要介護高齢者とペットとの関係」、「熊本地震被災地での人とペットの減災」など、「人と動物の関係」に関わるフィールドでの研究・実践を行う。特に熊本地震被災地では、益城町総合体育館避難所での避難ペット写真展「いぬネコ家族写真展」、益城町テクノ仮設団地での「人とペットの共生まちづくり」の企画・運営に関わってきた。