公開講演会「構文文法の考え方と英語教育への応用」
INFORMATION
第一部「文法が伝える意味とは何か?:構文文法の考え方」
皆さんは John swam his horse in the pool.(ジョンは馬をプールで泳がせた)という文を見ると何か違和感を覚えませんか。swim を辞書で引くと「泳ぐ」という意味があるのに、泳いでいるのは主語のジョンではなく、目的語の馬です。また、そもそも、swim は目的語を取る動詞でしょうか。辞書とは違う swim の意味でも、なんとなく理解できてしまうはなぜでしょうか。この文を理解するために、どのような英語の知識を持っている必要があるでしょうか。
本講義では、このような、よくよく考えてみると不思議な英語の文に対して「構文」という単位に注目しながら迫っていきます。語に意味があるように、構文にも意味があります。英語には二重目的語構文のような抽象度も複雑度も高いものから、単語のように抽象度も複雑度も低いものまで様々なタイプの構文があり、各構文は私たちの日常的な経験と深く結びついた意味を伝えます。構文がどのように習得され、どのように運用されるのかを見ていくことで、本講義では、構文を通して見えてくる私たち人間が持つ知識のありようについて一緒に考えていきたいと思います。
第二部「構文文法を教育に応用する」
第二部では、構文文法の英語教育への応用について考えていきます。構文文法は英語教育の場で大いに活用ができ、特に、文法を教える際に大いに役立ちます。例えば、皆さんは高校の英語の授業などで、I threw him the ball.のような二重目的語構文をthrew the ball to him のような他動詞構文に書き換える練習をしたことはないでしょうか。このような書き換え問題は、二つの文型が表す意味は大体同じという前提に立っています。しかし、この二つの文では表す事態が異なります。最初の文は、彼に向かって投げられたボールを彼が受け取ったことを表すのに対して、二つ目の文では、彼に投げられたボールを彼が実際に受け取ったかどうかまでは分かりません。構文文法では、文法も意味を伝えるという立場に立つため、無機質な書き換え問題の背後にある、豊かな意味の世界が見えてきます。
本講義では、英語教育の現場で使える様々な構文を紹介しながら、構文がなぜそのような形や意味をしているのかという疑問に対して、言葉は現実世界を映し出す鏡のようなものだと考える類像性の観点から考えていきたいと思います。私たちが経験した世界が構文の形や意味に影響を与えるからこそ、書き換えが可能に見える文であっても、それぞれの構文が確固たる意味を持っていると言えます。
講師
東京外国語大学大学院総合国際学研究院准教授
大谷 直輝 氏
研究分野:英語学(認知言語学、構文文法、談話機能文法、用法基盤モデル)
研究テーマ:前置詞、句動詞、語彙関係(多義語・類義語・反義語)
学歴:京都大学大学院人間・環境学研究科2012年9月博士(人間・環境学)
職歴:2009年4月埼玉大学英語教育開発センター 助教(~2013年3月)
2013年4月 京都府立大学文学部 講師(~2015年3月)
2015年4月 東京外国語大学大学院総合国際学研究院 講師(~2019年3月)
2019年4月 東京外国語大学大学院総合国際学研究院 准教授(~現在に至る)
司会
本学名誉教授、科研EMIプロジェクト代表、英語教育研究所所員
鳥飼 慎一郎
詳細情報
名称
内容
文法が伝える意味とは何か?:構文文法の考え方
第二部(14:50~16:20)
構文文法を教育に応用する
対象者
申し込み
- 事前申し込み 必要
- 参加費 無料
【申込締切】
6月23日(木)24:00まで
以下の申込フォームにアクセスし、必要情報を入力し送信してください。6月24日(金)に登録されたメールアドレスにZoom視聴のためのURL・ID等をお知らせします。