公開講演会「翻訳:実務者と研究者の関係を再考する」
INFORMATION
公開講演会「翻訳:実務者と研究者の関係を再考する」
~学部公開講演会『言語と社会や文化を<つなぐ>:世界と切り結ぶ異文化コミュニケーション』の一環として~
異文化コミュニケーション学部・研究科では、2016年度より通訳者・翻訳者を養成するカリキュラムを実施する一方、通訳翻訳研究分野で活発な研究活動を展開してきた。研究対象とする事象に自ら実践者として関与する研究者が大多数を占めるという特徴を持つ通訳翻訳研究(Translation and Interpreting Studies)では、「理論・研究と実践の架橋」が主題の一つとなってきた。翻訳理論家のチェスタマン(Andrew Chesterman)と欧州委員会翻訳者のワグナー(Emma Wagner)との対話に基づくCan Theory Help Translators?: A Dialogue Between the Ivory Tower and the Wordface(2002年)が刊行されて20年。機械翻訳の急速な展開やコロナ禍で加速したネット上のコミュニケーションの進展を背景とし、翻訳をとりまく環境は大きく変化した。翻訳の「民主化」、プロでない翻訳者(non-professional translators)、災害やパンデミックなどの危機に対応する翻訳(crisis translation)、機械翻訳と人手翻訳の関係などに注目が集まる中、翻訳の実務者コミュニティと研究者コミュニティの関係についてあらためて議論する機会を設ける。本講演会では、本学国際学術研究交流制度2022年度招へい研究員であるアンソニー・ピム教授(メルボルン大学)に、「翻訳者と研究者との『正しい』関係」についてお話しいただく。ピム教授は世界で最も影響力のある翻訳研究者の一人として、常に刺激的な議論を先導してきた。学生、研究者だけでなく、実務者、一般参加者にとっても、示唆に富む講演会になると考える。
講師
メルボルン大学言語・言語学部教授
Anthony Pym(アンソニー・ピム) 氏
オーストラリア・パース出身。1985年、フランス・社会科学高等研究院(École des hautes études en sciences sociales)で社会学博士号を取得。現在、メルボルン大学言語・言語学部教授。元・欧州翻訳学会会長。世界で最も著名な翻訳研究者の一人。書籍・論文の引用件数の多さでも翻訳研究分野では比類のない存在。代表的著作としてExploring Translation Theories (2010/2014)(邦訳『翻訳理論の探究』)、On Translator Ethics(2012)、Method in Translation History(1998/2014)など。
詳細情報
名称
内容
17:30~19:00 アンソニー・ピム教授による講演
使用言語:英語(通訳なし)、後日ビデオ配信
「On the correct relation between translators and academics」
要旨:国際的に見て、現在、大学・大学院の翻訳通訳プログラム卒業生の3分の2は翻訳者・通訳者以外の仕事に従事している。また、世界で日々生み出される翻訳のうちプロ翻訳者によるものは1%に満たない。つまり、翻訳に関する論考から恩恵を受けるかもしれない人々はプロ翻訳者だけでなく広範囲に及ぶ可能性がある。こうした状況に留意した新たな角度から翻訳の歴史的・文化的側面を考察することで、研究者・実務者両方に恩恵をもたらす関係を築く道筋が模索できる。
19:00~19:30 質疑応答
使用言語:英語(通訳なし)
対象者
申し込み
- 事前申し込み 不要
- 参加費 無料