第56回社会福祉のフロンティア「若者の《住まい》の確保が大切だ——若者とシングル・ペアレントの居住支援に取り組む先駆者たち」
INFORMATION
2000年代以降、若者の「生きづらさ」が着目され、様々な支援がなされるようになったが、シングル・ペアレントを含む若者への居住支援は、近年になりようやく社会的関心が広がってきた。若者らへの公的な居住支援は少ないが、この問題の重要性に気付いた人々がNPOなどを設立し、支援を行ってきた。その取り組みを通じて、若者らの「生きづらさ」の現状がよりリアルに認識されるとともに、「『住まい』を確保することがいかに大切か」という問題意識も広がりつつある。
本講演会では、一人親向けの住宅政策や居住支援のあり方を先駆的に研究、実践されてきた葛西リサ氏に、若者に対する居住支援の現状をお話いただく。さらに、行政とパートナーシップを取りながら、若年者向けの居住支援に最前線で取り組んでいるNPOの実践家の方々にも登壇いただき、若者向けの社会福祉実践の今後を展望する。
講師
追手門学院大学准教授
葛西 リサ(くずにし りさ) 氏
神戸大学大学院自然科学研究科修了。ひとり親世帯、DV被害者、セクシュアルマイノリティの住生活問題を専門とする。主な著書に、『母子世帯の居住貧困』(2017年、日本経済評論社)、「13歳から考える住まいの権利」(2022年、かもがわ出版)などがある。2009年、都市住宅学会研究奨励賞、2016年住総研研究選奨、2019年都市住宅学会研究論文賞を受賞。2021年より、国土交通省人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業評価委員会委員。
一般社団法人青草の原代表理事
藤田 琴子(ふじた ことこ) 氏
国際基督教大学卒業後に日本社会福祉教育専門学校に進学し、社会福祉士となる。都内の母子生活支援施設の支援員として、DV・虐待・貧困・障害など様々な事情で入所した親子と生活の場で関わっている。児童相談所の一時保護所を子どもたちにとって安心できる場にするために任意団体「いちほの会」を2019年に設立。保護所の職員や入所経験者などが交流して意見交換をする場づくりなどを行なっている。また、2021年11月から新宿区西新宿にて対象を限定しないみんなのお家「れもんハウス」をスタートし、一般社団法人青草の原を設立。「あなたでアルこと、ともにイルこと」をテーマにあたたかい場と出会い作りを目指して活動実験中。
シングルズキッズ株式会社代表取締役
山中 真奈(やまなか まな) 氏
“シングルズキッズたちを楽しくHAPPYに!”をミッションに、2017年より東京都世田谷区にて地域開放型・シニア同居型・シングルマザー下宿MANAHOUSE上用賀をスタート。現在では板橋区・豊島区・三鷹市・千葉県市川市など6棟運営。地域の社会福祉法人・NPO・一般社団法人とも連携し、DV避難の母子家庭や離婚前のプレシングルマザー、児童養護施設出身の若者に住まいを提供している。
NPO法人サンカクシャ代表理事
荒井 佑介(あらい ゆうすけ) 氏
大学生時代からホームレス支援や子どもの貧困問題に関わり始める。生活保護世帯を対象とする中学3年生の学習支援に長く関わっていたが、高校進学後に、中退、妊娠出産、進路就職で躓く子達を多く見たことから、NPO法人サンカクシャを立ち上げる。サンカクシャでは、15歳から25歳前後までの親や身近な大人を頼れない若者の「居場所」「住まい」「仕事」の3つをメインの支援として実施している。