公開セミナー「イザベル・ステンゲルス入門:人新世時代の環境哲学」
INFORMATION
ベルギーの哲学者イザベル・ステンゲルス(Isabelle Stengers, 1949-)は、哲学、科学技術論、エコロジー、フェミニズムなど多様な領域で世界的に知られる哲学者である。化学研究からスタートしたステンゲルスは、ノーベル化学賞受賞者のイリヤ・プリゴジンと共同研究を行ったのち、イギリスの哲学者ホワイトヘッド、フランスの哲学者ジル・ドゥルーズおよびフェリックス・ガタリらの影響を受けた科学哲学研究や環境思想研究の成果を次々と公刊する。その後、アメリカの生物学者・思想家ダナ・ハラウェイ、フランスの科学哲学者ブルーノ・ラトゥールらとも共同して、気候変動や人新世といった問題が焦点となる現代における環境哲学・エコロジー思想の中心人物となっている。このようにイザベル・ステンゲルスは世界的にきわめて重要な地位を占める哲学者であるにもかかわらず、ほとんど日本ではその名が知られることはなかった。
本講演会では、ステンゲルスの弟子にあたり、自身もステンゲルスおよびフェリックス・ガタリの理論に基づき独自の環境思想を構築しているベルギー・サン=リュック芸術高等学院教授のニコラ・プリニョ氏をお招きし、イザベル・ステンゲルスの思想の全体像に迫る。
コメンテーターとし、フェリックス・ガタリの哲学に精通し、自身も「里山」をはじめとしたエコロジー思想についての研究を展開している村澤真保呂龍谷大学教授をお招きする。
講師
ベルギー・サン=リュック芸術高等学院教授、ブリュッセル自由大学研究員
Nicolas Prignot(ニコラ・プリニョ) 氏
専門は物理学・哲学・環境思想。主な論文に、“Fukushima and the World’s Devastation”, in Tetsugaku. International Journal of the Philosophical Association of Japan, Vol.6, 2022; “Félix Guattari et l’écologie de la dévastation”, in Rue Descartes, no. 88, 2016; “Animaux, écologie et intégrité des mondes. Vision de l'écologie sur grand écran”, in Vacarme, no. 70, 2015 ほか多数。
龍谷大学社会学部教授
村澤 真保呂 氏
専門は現代フランス哲学・環境思想・社会思想史。主な著作に、『フェリックス・ガタリと現代世界』(共著、ナカニシヤ出版、2022年)、『都市を終わらせる「人新世」時代の精神、社会、自然』(ナカニシヤ出版、2021年)、Satoyama Studies: Socio-ecological Considerations on Cultural Nature (Union Press, 2020)、『里山学講義』(晃洋書房、2015年)、訳書にフェリックス・ガタリ『ミクロ政治学』(法政大学出版局、2021年)ほか多数。