OBJECTIVE.
小惑星探査機はやぶさ2に搭載された小型着陸機MASCOTは、2018年10月3日に本体から分離されました。その後MASCOTのカメラのデータが地球に届き、小惑星の表面状態が明らかになっています。ドイツ航空宇宙センター(DLR)によって画像が公開されました。
立教大学は、はやぶさ2に搭載されたカメラの画像データからMASCOTの飛跡を推定する作業に取り組みました。DLRによる発表内容は、この飛跡情報に基づいています。このページでは、DLRによる記事の解説とともに、飛跡の推定に関する説明を行います。
図1 MASCOT投下後、はやぶさ2が上昇していく途中で得られた画像に、MASCOTの飛跡(推定)を示した(水色)。黄色の線は、はやぶさ2カメラ画像に写った見かけの位置であり、水色の線は飛行するMASCOTの真下の位置を示す。(画像クレジット:JAXA, 東京大, 高知大, 立教大, 名古屋大, 千葉工大, 明治大, 会津大, 産総研)
小惑星探査機はやぶさ2に搭載された小型着陸機MASCOTは、2018年10月3日10時57分20秒に本体から分離されました。
(http://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20181005_MSC_ONC/)
その後MASCOTのカメラのデータが届き、小惑星の表面状態が明らかになっています。ドイツ航空宇宙センター(DLR)によって画像が公開されています。表面はごつごつとした岩に覆われており、砂で覆われているような場所は見つかっていません。一般的に、宇宙空間に長期間曝された小惑星では、宇宙風化という現象により細かい粒子で表面が覆われると考えられていますが、この予想とは大きく異なる姿が捉えられています。
*DLRによる記事
*JAXAによる日本語記事
この内容に関連し、立教大学は、はやぶさ2に搭載されたカメラの画像データからMASCOTの飛跡を指定する作業に取り組みました。図1は、その飛跡を示しています。ここで得られた飛跡情報を基にして、MASCOTのカメラが見ていた場所が推定されています。図2は、その一例を示しています。図2の右の写真だけでは、小惑星リュウグウ上で撮影した場所を推定することはほぼ不可能です。MASCOTチームは、はやぶさ2カメラの画像から推定される飛跡とMASCOTカメラの画像を照合して、撮影した場所を推定する事に成功しています。
(http://www.hayabusa2.jaxa.jp/topics/20181005_MSC_ONC/)
その後MASCOTのカメラのデータが届き、小惑星の表面状態が明らかになっています。ドイツ航空宇宙センター(DLR)によって画像が公開されています。表面はごつごつとした岩に覆われており、砂で覆われているような場所は見つかっていません。一般的に、宇宙空間に長期間曝された小惑星では、宇宙風化という現象により細かい粒子で表面が覆われると考えられていますが、この予想とは大きく異なる姿が捉えられています。
*DLRによる記事
*JAXAによる日本語記事
この内容に関連し、立教大学は、はやぶさ2に搭載されたカメラの画像データからMASCOTの飛跡を指定する作業に取り組みました。図1は、その飛跡を示しています。ここで得られた飛跡情報を基にして、MASCOTのカメラが見ていた場所が推定されています。図2は、その一例を示しています。図2の右の写真だけでは、小惑星リュウグウ上で撮影した場所を推定することはほぼ不可能です。MASCOTチームは、はやぶさ2カメラの画像から推定される飛跡とMASCOTカメラの画像を照合して、撮影した場所を推定する事に成功しています。
図2 左 MASCOTの飛跡情報と推定される視野 右MASCOTカメラ画像 (画像クレジット(左):JAXA, 東京大, 高知大, 立教大, 名古屋大, 千葉工大, 明治大, 会津大, 産総研 (右)MASCOT, DLR, JAXA)
図1や図2には黄色と水色の線が引かれています。黄色の線は、カメラで写った見かけの位置を示しており、水色の線で推定された実際の位置(MASCOTの直下点)を示しています。図3に実際の位置を推定するための方法を示します。
MASCOTが上空を飛んでいる間、さらにその上空にあるはやぶさ2から撮影すると、実際の位置を見かけの位置から推定することはできません。また、MASCOTには高度計が搭載されていないため、自身では高度が分かりません。はやぶさ2本体は高度計を持っており地表からの高度は分かるのですが、はやぶさ2からMASCOTまでの距離を直接測ることはできないのです。
そこで画像上に写っている影を利用することにしました。はやぶさ2の位置は分かっていて、影も見えています。この情報を利用して、MASCOTの影の位置と見かけの位置からMASCOTの位置が推定されました。このようにして求められた飛跡が図1や図2の水色の線で示されています。この情報を基にしてMASCOTで得られた画像の位置が推定されています。
MASCOTが上空を飛んでいる間、さらにその上空にあるはやぶさ2から撮影すると、実際の位置を見かけの位置から推定することはできません。また、MASCOTには高度計が搭載されていないため、自身では高度が分かりません。はやぶさ2本体は高度計を持っており地表からの高度は分かるのですが、はやぶさ2からMASCOTまでの距離を直接測ることはできないのです。
そこで画像上に写っている影を利用することにしました。はやぶさ2の位置は分かっていて、影も見えています。この情報を利用して、MASCOTの影の位置と見かけの位置からMASCOTの位置が推定されました。このようにして求められた飛跡が図1や図2の水色の線で示されています。この情報を基にしてMASCOTで得られた画像の位置が推定されています。
図3 MASCOT飛跡の推定方法(左)実際に撮影されたMASCOTとその影、はやぶさ2本体の影(右)見かけの位置、影と実際の位置の関係 (画像クレジット(左):JAXA, 東京大, 高知大, 立教大, 名古屋大, 千葉工大, 明治大, 会津大, 産総研 (右)立教大学)
MASCOTの観測装置により大量のデータが得られており、MASCOTチームが精力的に解析を進めています。今回紹介した飛跡情報についても、初期解析を始める段階としては充分なものですが、まだ精度を向上する余地があり、国際的な研究体制により作業を進めています。
はやぶさ2の着陸・試料採取は当初予定を変更して2019年1月以降に延期となりました。MASCOTで得られた情報も活用し、準備を万全に整えて着陸に臨みます。ゆっくりはしていられませんが、このために十分な時間が残されています。はやぶさ2チームは一丸となって、この世界初の挑戦に取り組んでいます。
はやぶさ2の着陸・試料採取は当初予定を変更して2019年1月以降に延期となりました。MASCOTで得られた情報も活用し、準備を万全に整えて着陸に臨みます。ゆっくりはしていられませんが、このために十分な時間が残されています。はやぶさ2チームは一丸となって、この世界初の挑戦に取り組んでいます。