連携講座「池袋学」|持続可能な未来を指向した池袋学をめざして
多田 慎之介 さん(社会学部現代文化学科3年次)
2015/01/09
トピックス
OVERVIEW
東京芸術劇場×立教大学主催 連携講座「池袋学」2014年度<秋季>
日時 | 2014年11月26日(水)19:00~21:00 |
会場 | 池袋キャンパス 14号館2階 D201教室 |
講演者 | 阿部 治(本学社会学部教授、異文化コミュニケーション研究科教授、ESD研究所長) |
講演会レポート
東京芸術劇場と立教大学による連携講座「池袋学」秋季3回目のテーマは、「持続可能な未来を指向した池袋学をめざして」。今回は、立教大学社会学部・異文化コミュニケーション研究科教授でESD研究所所長の阿部治教授による講演と、当日ゲスト参加された高野之夫豊島区長との対談が行われました。
今回の講演において阿部教授は、ESD(Education for Sustainable Development:持続可能な開発のための教育)の観点から池袋の発展を提案しました。ESDとは、いわば「持続可能な開発を通じて人々が安心して暮らせる社会を実現するために必要な考え方などを学び社会に参画する力を育むこと」です。なお、阿部教授はESDの一環として、社会学部のゼミの中で「蝶の道プロジェクト」に取り組んでいます。親しみを持ちやすい蝶を池袋に呼ぶことにより、都心部では感じにくい生物多様性について知ってもらうことを中心テーマに活動しています。
昨年の5月、豊島区が東京23区内で唯一の消滅可能性都市として指摘されました。消滅可能性都市とは、20~39歳の女性の人口が2040年までに50%以上減少し、行政機能の維持が難しくなる自治体のことです。それを踏まえ阿部教授は、「豊島区および池袋の発展のために重要なのは、将来のためにビジョンを持ち、どうしていくかを考えることである」ことで、そのために、ESDつまり将来を担う持続可能な開発のための教育が必要だと言います。
ESDは、1980年代に環境問題が多発したことを受けて、今までの際限のない開発から持続可能な発展への転換の必要性から生まれました。提唱国は日本であり、阿部教授はその第一人者でもあります。現在では、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」でもESDが取り入れられています。持続可能な社会のために必要な視点は、WANTS(欲しいもの)からNEEDS(必要な物)への変換と、自然、他の人々、未来の人々との関係を、想像力を持って考えることです。また、持続可能な社会のためには、環境・経済・社会に加えて政治の力が不可欠ですが、日本はESDの提唱国であるにもかかわらず、明確なビジョンもなくまだまだ認知度が低いことが課題として挙げられます。
しかし、日本国内でも、ESDを実践することで地域再生に成功した例があります。多摩市では、「2050年の大人づくり」をテーマに行政と企業が協力して地域をつなげる活動をしています。熊本県水俣市では、すべての公立小学校で環境と人権教育や地元学を取り入れることで地域のつながりを強化しました。この二つに共通するのは、未来のための教育を行っている点です。豊島区および池袋でも、未来の持続可能な発展のためにESDを取り入れることを阿部教授は提案され、講義を終えました。
次に阿部教授と高野区長との対談が行われました。豊島区では、毎年1万本を目標に木を植えることで森林増加とコミュニティづくりに力を入れています。また、現在47の自治体との交流を持っており、豊島区の課題を豊島区だけの問題として捉えるのではなく、他の地域と交流をしながら解決していきたいと高野区長は言います。池袋学を通じて地域、行政、大学やNPO・NGOが同じテーブルにつけたことは池袋の発展に向けての第一歩になり、今後も継続して協力していきたいと、阿部教授と高野区長は締めくくりました。
大都市池袋を擁する豊島区が、消滅可能性都市として選ばれたことは大きな驚きでした。しかし、これは池袋だけの問題ではなく日本全体の問題です。少子高齢化や原発の問題など日本は多くの問題を抱えています。ESDという考え方は、まさに今の日本にとって最も重要な考え方であると思いました。残念ながら、提唱国である日本ではほとんどESDは広がっていません。日本国内で普及するためにも、池袋がESDを取り入れて成功することが不可欠であると思いました。私も池袋の発展のために何かできることはないか、考えてみたいと思います。
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。
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