地球誕生と生命の起源の謎に迫る 惑星探査の最前線

理学部物理学科 亀田 真吾 教授

2018/12/08

研究活動と教授陣

OVERVIEW

2018年6月、立教大学理学部の亀田真吾教授と同研究室の学生が開発に協力した小惑星探査機「はやぶさ2」が、目的地である小惑星リュウグウに到着しました。はるか宇宙の惑星や小惑星の探査に挑み続ける理由は何か、世界における動向と今後の可能性とは。数々の宇宙開発プロジェクトに携わる亀田教授に伺いました。

惑星探査が目指すものとは。また、現在はどんな段階を迎えているのでしょうか。

惑星探査の目的は、「地球がどのように誕生し、生物がいかにして生まれ、現在のような姿になったのか」という究極の疑問を解き明かすことです。地球と比較的環境が近い火星や金星、あるいは遠く離れた木星や土星。異なる特性を持つさまざまな惑星、さらには小惑星や衛星の成り立ちや現在の姿を探ることで、地球の誕生プロセスの謎を明らかにすることを目指しています。
その歴史は、1960~70年代に勢いを増したソ連とアメリカの月探査競争に端を発します。その後、両国は地球から近い火星・金星の探査に着手し、90年代頃にはヨーロッパと日本が参入。最近では中国、インドが加わり、それぞれ月探査を成功させました。
宇宙開発は国力誇示の側面から競い合う風潮がありましたが、現在は開発規模の拡大に伴い国際協力が進み始めています。日本もアメリカ航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)との共同プロジェクトなどを推進しており、今後はさらにオープンに、国の枠にとらわれず研究者レベルで協力し合うようになると考えています。「宇宙に向けて地球が団結する」ことも、宇宙開発の大事な意義。国の枠組みを越えて協働することは、平和への積み重ねの一つだと言えるでしょう。

日本がリードしているのはどのような分野でしょうか。

はやぶさ2に搭載された「光学航法カメラ 」。開発には亀田教授と研究室の学部学生、大学院学生が協力した ⒸJAXA

2010年に地球に帰還し、その苦難の物語が広く知られるところとなった探査機「はやぶさ」のプロジェクトに代表される小惑星探査の分野です。生命誕生に必要な水や有機物は、小惑星から飛来した隕石によって原始の地球にもたらされたと推測されています。つまり小惑星から得られるデータは、生命誕生の過程を解明する上で重要なヒントを秘めているのです。
「はやぶさ」開発当時、探査機が稼働できる圏内に水や有機物を含むC型と呼ばれる小惑星は発見されていなかったため、「はやぶさ」はS型小惑星イトカワへ向かい、小惑星から物質を持ち帰るサンプル・リターン技術を確立させました。その後さまざまな技術革新や改良を経て、「はやぶさ2」は「はやぶさ」の構想段階から目標としていたC型小惑星探査を行います。水や有機物を含んだ物質を持ち帰ることが今回のミッションであり、海や生命の起源・進化に関する大きな手掛かりが得られるはずです。2014年に打ち上げられた「はやぶさ2」は、今年6月にリュウグウへ到着。地表でのサンプリング作業を開始し、2020年末頃に地球に帰還する予定です。

惑星探査をはじめとする宇宙開発の今後の展開について、どのようにお考えでしょうか。

日本では、2024年の探査機打ち上げを目標として火星衛星探査計画(MMX)が進んでいます。火星の衛星は小惑星と同様の特徴を持つことが分かっており、地球に供給された物質を解明する上での次なる一歩となるでしょう。その先は、さらに遠方の天体を目指すか、地球と原始の状態が近かったとされる火星の調査を進めるかの2つの選択肢があると考えています。
一方では、近年太陽系の外にも地球に似た惑星が発見されました。こうした太陽系外惑星の調査も進行中で、今年4月にはアメリカ航空宇宙局(NASA)が宇宙望遠鏡「TESS」を打ち上げています。これまでは、「遠くの天体を観測する」天文分野と、「惑星の表面を調べる」惑星分野の研究者はほとんど交流がありませんでした。しかし「遠く」の「惑星」の姿を解明するには、分野を越えた協業が求められていくと思います。
宇宙開発の現場では、一昔前に比べ、関わる分野や求められる技術の幅が広がっています。「はやぶさ2」をはじめ、私が携わっているプロジェクトの一部には、大学院生のみならず学部学生も参加しています。宇宙に関心がある学生や中高生、子どもたちに伝えたいのは、「自分が関わる日はそう遠い未来ではない」ということ。早い段階から心の準備をして、深遠な宇宙、そのフロンティアへと挑戦してほしいと思います。

光学航法カメラで撮影された「リュウグウ」 ⒸJAXA、東大、立教大など

高度約6kmから(7月20日)ⒸJAXA、東大、立教大など

亀田教授の3つの視点

  1. 宇宙開発は「国際競争」ではなく「国際協力」の段階へ
  2. 今後は太陽系外惑星の調査・研究が分野の枠を越えて進んでいく
  3. 早い段階から宇宙開発の現場に携わることができる時代になる

プロフィール

profile

亀田 真吾

2002年、東京大学理学部卒業。2007年、東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了、博士(理学)。JAXA宇宙航空プロジェクト研究員を経て、2011年立教大学理学部准教授に着任、2018年4月より現職。

☆2018年度秋学期 JAXA連携講座「JAXA宇宙科学技術講義」開講
JAXAと立教大学が連携し、宇宙プロジェクトの現場から宇宙科学を学ぶ「JAXA宇宙科学技術講義」(理学部対象)を開講。JAXAの研究者による講義を通して、これまでの成果や技術開発の経緯、進行中のプロジェクトについて理解を深めます。

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