池袋キャンパス100周年 豊島区と立教大学の豊かな連携「街づくり」と「人づくり」をともに
2018/09/07
トピックス
OVERVIEW
2018年、立教の池袋キャンパスは100周年を迎えました。1918年に築地から移転して以来、池袋の街とともに歩み、ともに発展を続けてきた立教。今号では、東京都豊島区と立教大学の豊かな関係性とこれからの展望について、本学卒業生の高野之夫豊島区長(1960年経済学部卒)と郭洋春総長に、池袋で生まれ立教で過ごしたご自身の思い出も交えながら、語っていただきました。
池袋の記憶、立教の思い出
高野之夫区長(右)と郭洋春総長。池袋出身という共通点もあり、対談は盛り上がった
戦後は、東西に形成されたヤミ市が人々の生活の再建と商業の発達を支え、池袋の街は急速に発展していきました。多くの百貨店が軒を連ね、一大繁華街へと変貌していく過程をつぶさに見てきた私は、まさに池袋の成長とともに歩んできたと言えると思います。
郭:私も生まれたのは西口で、池袋2丁目の辺りです。その後練馬区に転居してからも、遊びに行くのは決まって池袋でした。当時は東口が賑わっていて、西武百貨店やいまはなき丸物百貨店によく足を運んでいました。高校時代にはサンシャインシティの建設が始まり、ちょうど教室からその様子が見えて日々眺めていた記憶があります。
1990年代に入り、東武百貨店が売り場面積日本一をうたって規模を拡大し、東京芸術劇場が建設されてからは、西口も活気づきましたね。
池袋に移転間もない頃の立教大学。中央に建つのが本館で、チャペル(右)、図書館(当時・左)が並ぶ
郭:私は大学院から立教で学びましたが、初めて池袋キャンパスを訪れた時に驚いたのは、構内の美しさ、スマートさでした。学生運動の名残をとどめ、ある種雑然としていた他大学とは一線を画していて、いい意味でカルチャーショックを受けたことを覚えています。
街と一体化したキャンパスの姿
(左)戦前の池袋駅西口通り (右)戦後、池袋駅西口の東京学芸大学附属小学校(現・東京芸術劇場)周辺のヤミ市
高野:大学と街が一体となっている雰囲気は確かにありますね。私が大学生の時は長嶋茂雄さんがいた時代で、野球部が東京六大学野球で連覇を重ねていた頃です。当時は野球部が優勝すると、商店街を中心に地元住民が街をあげてお祝いをしていました。
郭:2017年、野球部は東京六大学野球、ならびに全日本大学野球選手権大会で優勝を果たしました。区長にもご参加いただいた優勝祝賀パレードの際、多くの地域の方々からご支援・ご協力を賜ったのは、そうした昔からの交流やつながりが根底にあったからだと思います。また、地元から立教に進学される方がこれだけ多いのも珍しいと思いますね。
左/池袋キャンパスの敷地外周はコンクリート壁だった1965年頃の様子 右/2001年の改修工事で、現在のフェンスに。同時に正門付近のセットバックも行われた
郭:ちょうどその頃から、地域の方がキャンパスに来られる機会が増えましたね。写生をしている年配の方がおられたり、園児たちが芝生で遊んでいたり。コンクリートの壁からフェンスになったことでオープンな雰囲気になり、気軽に入りやすくなったのでしょう。区長のご提案によって、地域に開かれた大学としての役割を果たせてきたのだと思います。
高野:立教大学が周囲に素晴らしい姿を見せることで、街自体も変わりますから。東京芸術劇場も含め、西口の周辺一体がもっと素敵な街になるように、今後も期待を寄せています。
多方面で連携しより確かな基盤づくりを
我々は今回の池袋キャンパス100周年のキャッチフレーズを「池袋の街とともに」としましたが、この13年間の多方面での連携は、まさにその象徴だと思います。地域に深く根差してきた歴史を土台に、協定という確かな形にする、あるいは文化や歴史といった分野で各方面と連携することで、より力強く濃密な関係を築くことができたと考えています。
高野:区の側としては、よく立教大学が踏み切ってくれたと思います。いまでこそ異なりますが、以前の池袋にはともすればマイナスのイメージがありましたから。池袋の印象が悪ければ、立教のイメージも悪くなりかねない。しかし地域との連携を確かな形にして、本当に一体となって歩んできてくれました。池袋と立教大学が互いの魅力を高め合い、相乗効果をもたらす特別な関係を築けていると感じます。
郭:これだけ密な連携を実現できた背景の一つは、本学が主に西口を中心とした活性化に取り組み、対象とするエリアを明確に意識してきたことがあると思います。もう一つは、かなり早い段階から地域のため、住民の方々のために貢献してきた実績を認めていただけた結果ではないかと受け止めています。一方では「もっと頑張れ」というエールでもあると思いますので、今後もさらに多様な形で地域社会に寄与していきたいと思います。
高野:さまざまな要請を受け入れていただき、区としても感謝しています。また、就職先として豊島区役所を志望する立教生が近年増加しています。これまでの関係づくりの成果が、そうした部分でも表れているのではないでしょうか。
大切なのは「目に見える」変化
左/池袋駅西口では大規模な再開発も動き出している。※このパースはイメージであり、今後変更する可能性があります 提供:三菱地所 右上/東京芸術劇場に隣接する池袋西口公園には、2019年秋、野外劇場が登場予定 右下/池袋の街を回遊する電気バスの運行は2019年秋からの予定
高野:以前は報道やドラマの影響もあり、やや怖いイメージを持たれがちだったと思います。私は区議会議員から都議会議員を経て区長になりましたが、そもそも議員になった理由は、そんな池袋のマイナスイメージを変えたい一心でした。
2014年には日本創成会議の人口減少問題検討分科会が、2010年から30年間の20〜39歳の女性人口の予想減少率を推計して「消滅可能性都市」をリストアップし、豊島区は23区で唯一その可能性を指摘されました。しかし、以前から進めていた治安向上の取り組みや、女性が暮らしやすい街づくりなどのさまざまな施策が実を結び、現在池袋および豊島区は「住みたい街」「共働き子育てしやすい街」といった各種のランキングで上位を獲得するまでになりました。
郭:豊島区は常に新しいことに取り組んで変化し、街が活気に満ちている印象があります。しかもそれが、目に見えて分かる点が素晴らしいですね。東口の開発・整備が進み、西口も池袋西口公園や駅前地区の再開発がスタートしています。いくら変化していると主張しても、目に見えて実感できないと伝わりませんから。
高野:その点は我々も意識してきました。建築家の隈研吾氏の設計による現在の庁舎が、まさに目に見えるものですね。東口の旧庁舎の跡地には、3つの建物と8つの劇場からなる「Hareza池袋」(2020年夏、グランドオープン予定)を建設中で、周辺エリアの再開発も含め、国際アート・カルチャー都市を目指す新たな街づくりが始まっています。
私は「走りながら考える」タイプで、常にスピード感を持って改革を推し進めてきました。それに街の方々も応えてくださり、ここ数年、顕著な形で表れてきているのだと思います。
郭:その点については、我々はもっと学ばなければなりません。これからの100年は、果敢に発展する豊島区に負けないように本学も発展しなければ、「ともに歩む」とは言えないでしょう。立教大学としても、教育、研究、その他さまざまな取り組みにおける変化を、目に見える形でしっかり発信していきたいと思います。
次の100年に向けて「街づくり」と「人づくり」を
郭:東京オリンピック・パラリンピックに関する本学の取り組みの一つとして、区から助言をいただき、ポール・ラッシュ・アスレティックセンターの温水プールを、パラリンピック水泳日本代表選手の練習場所として提供しています。世界で活躍する選手にこうした形で貢献できることは光栄ですし、学生がトップアスリートと触れる貴重な機会にもなっています。
2020年には大会ボランティアとして学生を送り出し、豊島区を訪れる外国人観光客への対応も地域と一緒になって行います。これらは学生にとって、座学では得られない学びを得る絶好のチャンスになるでしょう。
高野:今年は、豊島区と立教大学がともに大きく発展していくための新たなスタートです。次の100年に向けて、さらにいい「街づくり」と「人づくり」を進めていきたいですね。「街づくり」は豊島区で、「人づくり」は立教大学で、二人三脚でやっていく。連携をより密に深めながら、互いがさらに飛躍できるよう、さまざまな取り組みを推進していきたいと思います。
対談者プロフィール
豊島区長 高野 之夫
立教大学総長 郭 洋春
池袋キャンパス100周年
2018年の100周年を記念したさまざまな事業を展開するにあたり、シンボルデザインを制作しました。本デザインは、学生・卒業生・教職員に愛され続けてきた本学の象徴ともいえる本館と池袋の街をモチーフとすることで、100年という長い間、池袋の街と共に発展した歴史と、未来に向けて歩み続けていくという思いを込めています。
【特設ページ】http://www.rikkyo.ac.jp/ikebukuro100th/
記念事業 (予定)
- 記念式典(10月・11月):池袋キャンパス100周年を記念し、式典を行います。
- キャンパス・ブロック (11月): <レゴブロック>プロのレゴビルダーが、池袋キャンパスをブロック化。学生、生徒、児童、校友等の参加を予定しています。 <nanoblock>立教オリジナルのnanoblock製品を開発して、公式グッズとして販売する予定です。
- 立教学院展示館 第5回企画展 (10月):豊島区、池袋、立教の変遷や出来事を貴重資料や写真、展示物にて振り返ります。
- 映像制作 (9月):貴重な映像資料を編集します。歴史と伝統を学ぶことができる内容です。
- 池上彰 客員教授 記念講演会 (10月):本学客員教授を務める池上 彰氏による記念講演会を開催します。
- 立教学院創立者ウィリアムズ 主教と金平糖 (11月):創立者ウィリアムズ主教の人柄を伝える逸話が残る「金平糖」を制作します。
- 立教大学本棚基金プロジェク ト:不要となった本等を集めて販売し、その販売額を大学へ寄附するプロジェクト。現在、受付中です。
- 立教池袋キャンパス 100周年記念年賀ハガキ (11月):記念年賀ハガキを制作し、豊島区内の郵便局限定で販売します。ほか
立教学院の沿革
1918年 大学が池袋に移転。本館、図書館、寄宿舎(現・2号館、3号館)、食堂完成。
1922年 大学令による大学として認可。文学部、商学部および予科を設置。
1923年 立教中学校が、関東大震災で校舎焼失し、築地から池袋へ移転。
1945年 第二次世界大戦。立教大学のレンガ校舎群は焼失を免れる。
1948年 池袋に新制中学校、高等学校、小学校開設。
1949年 新制大学として発足。文学部、経済学部、理学部を設置。
1958年 社会学部を設置。
1959年 法学部を設置。
1960年 高等学校を池袋から埼玉県新座市へ移転。
1990年 新座キャンパス開校。
1998年 観光学部、コミュニティ福祉学部(共に新座キャンパス)を設置。
2000年 立教池袋高等学校開設、立教新座中学校開設。
2006年 経営学部(池袋キャンパス)、現代心理学部(新座キャンパス)を設置。
2008年 異文化コミュニケーション学部(池袋キャンパス)を設置。
2017年 Global Liberal Arts Program(GLAP/池袋キャンパス)設置。
※本記事は季刊「立教」245号(2018年7月発行)をもとに再構成したものです。定期購読のお申し込みはこちら
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
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