理学部の教員・卒業生・大学生による座談会その2

[大山 秀子 教授]理学部

2015/01/02

立教を選ぶ理由

OVERVIEW

理学部の卒業生、在学生、教員がその魅力について語りました。

大学生活について

お二人がこの学部を選んだ理由を教えてください。

(大学生)
もともと地球環境問題に興味を持っていました。立教大学のオープンキャンパスに高校3年生の時に行った時に和田先生の講義があり、その時に、新しいエネルギー変換があるんじゃないかということで、人工光合成の話をされていました。それを聞いて、この大学なら何か面白いことができるんじゃないかと思い、受験をしました。

(卒業生)
高校3年生の時に訪れたオープンキャンパスの印象がよかったことですね。ほとんどの大学がグループで一個の実験をする事に対し、一人一個の実験がしっかりできるということに魅力を感じたことを覚えています。また先生と学生の距離が近いということも魅力でした。良い意味で先生と学生の距離が近くないと学ぶことが独りよがりになってしまうと思ったからです。もっと高度な事を学びたい時に直接先生に聞くことができることも立教大学なら気軽にできそうだと思ったからです。

立教大学の学生の特徴のようなものはありますか?

(先生)
どうだろう?立教大学の学生は明るいかな、私たちの研究室は特にそうかも(笑)。
文系・理系学部のほぼ全てを網羅している環境はみんなが良いと感じている部分じゃないでしょうか?授業でも一緒に文系の学生と受けたりするので、そこから生まれる学生同士の交流関係やサークルも育ったりして。でも、文系の人が結構多いので、なんで夏休みに来て実験するのとか言われて困っちゃう学生も多いのも事実ですね(笑)。

(大学生)
実験の経過を追っていくのは理工系学部では、当たり前のことですからね。全然気になりませんよ。立教大学といえばサークル活動も盛んですね。今、どれぐらいあるんだろう……体育会系から文化系まで、本当にさまざまなものがありますね。

(卒業生)
サークルは確かに多いですね。私も自分でサークルを作って活動していました。サークル名は奈良のサークルで「奈良サー」(笑)。

(大学生)
何のサークルなんですか?

(卒業生)
老人ホームで歌を歌うサークルです。実は、高校生の時に老人ホームのクリスマス会などで歌を披露していました。その時のふれあいや感動を大学に入っても続けたくて、はじめました。クリスマスシーズンには、うちにも来て欲しいとオファーがあることも。こう見えて「奈良サー」は、結構人気だったんですよ(笑)。

(先生)
研究とサークル活動で充実していた学生生活だったんですね。

(卒業生)
ありがとうございます。あと、立教大学の特徴の魅力について思うことがもうひとつ。キャンパス内に文系の人達がいるから自分が定まるというのはあります。「私はこんなバイトをしている」とか就職に関することなどを、サークルや授業で一緒になる文系仲間から聞くことも少なくありません。理学部だけでは得られない情報の中から、自分では気づかなかった就職の選択肢や未来に向けたチャレンジに気づけることもありますからね。文系と理系が同じキャンパス内にいるというのも良い所なのではないかと思います。

岡田さんに質問です。現在の研究内容について教えてください。

(大学生)
先生が解説されましたが、身の回りにたくさんプラスチックありますが、そのほとんどが石油をベースとしたものです。私の研究は石油といったものではなく、植物などの天然の材料から、セルロースというプラスチックの原料ともなる物質を取り出す研究です。
植物生まれのカーボンを燃やすと、二酸化炭素が出ますが、植物は二酸化炭素で育つので、結局CO2の量には影響はありません。エネルギー循環型の社会の実現にも寄与できる研究ですね。

天然素材からセルロースを取り出す。その工程を教えてください。

(大学生)
わかりやすいのは、スギの木紛ですね。杉の粉を漂白していくと、だんだん余分なものが落とされ、最終的にセルロースだけが残ります。変わったものでいくと海に住んでいるホヤからもセルロールは取れます。外套膜(ガイトウマク)という殻の部分を同様に漂白していくのです。ちなみにセルロースが取れる生物はホヤだけなんですよ。

(先生)
海のものだからしかたがないけど、生臭い実験になっちゃうよね。

(大学生)
見た目もグロテスクですし。築地で買ってきたホヤを太いハサミで解体すると、研究室が魚屋さんみたいな匂いに……(笑)。

(卒業生)
なかなかインパクトがありそう。いろんなものからセルロースはとれるのですね。

この研究の面白さや大変さはどこにありますか?

(大学生)
漂白を続けていくとスギの木紛もホヤも白くなるんですけど、それをさらにほぐしてあげてナノレベルまでに至ると、透明のゲル状になります。これがナノセルロースで、それが自分の手の中でできた時はとても感動しました。
大変だったことは、おそらくどんな研究でも同じだとは思いますが、何もわからない状態で始めたことですね。まずその分野に関する論文を読んで、その概略から掴むことからスタートしました。自分の知りたい分野の論文を探していくのですが、論文はほぼ英語で書かれていました。最近は専門用語などもわかってきて、スラスラと読めるようになりましたが最初の頃は苦労しました。そういった論文に書いてある、セルロースの取り出し方を自分でやってみて、できた時の瞬間は今でも良い思い出です。

教育や研究における立教大学の独自性のようなものはありますか?

(先生)
化学科に在籍している学生は一学年約70名。小規模だからこそそれぞれの学生に向き合って教育をし、「なぜ」という問いを大切に化学の基礎力をしっかりと身につけるようにしています。学生実験でも卒業研究でも原則として一人ずつ実験を行います。学生実験では実験を始める前にノートづくりをさせています。課題は何か?どのようにそれを明らかにするのか?などをノートにまとめ、よく理解してから実験に入ります。また、実験レポートの面接もあり、きちっとしたレポートが書けるまで再度レポートを提出しなければなりません。そのようにしっかりと基礎力をつけた後、研究室に入って研究に取り組むことになります。うちの研究室の場合は、高分子という共通のテーマはあるものの、携わる研究対象は本当にさまざま。学生を集めてのディスカッションなどもありますが、あくまでそこは、個々人の発表や成果を共有する場となっています。自分で悩み考え、汗水を流して成果を挙げるというのが研究スタイルです。

研究者の本来あるべき姿ですね。

(先生)
そうでないと、本当の意味での化学の面白さや研究の大変さはなかなか理解できないでしょう。

(卒業生)
私はその厳しい環境に感謝しているんですよ。他の大学だとチームで一個の研究に取り組みこともあります。でも、それって一人での研究と向き合う機会を無駄にしていると思うんですね。なぜなら、実験は自分でやらないと意味がない。誰かにやってもらったら、それは結果を知ることだけでしかない、使う器具や実験の順番といった一連のことを、全部自分で決める努力をする、それでも足りない所は友達とディスカッションしたり、先生に聞けばいい。やはり研究に対してストイックでないと、やったことは自分の実にはならない気がしています。

(先生)
立教大学の研究とはなんたるかを彼女は代弁してくれました。どうもありがとう。

就職活動、仕事について

それでは現在のお仕事について教えてください。

(卒業生)
DIC株式会社という総合化学メーカーで研究職に携わっています。印刷インキで世界トップシェアを誇るDICは樹脂や顔料などの分野でも知られています。
現在の主な業務ですが、樹脂の成形材料を取り扱う部門で、PPSと呼ばれる樹脂の研究開発をしています。PPSは金属代替として期待されているプラスチックで、主に車のエンジンまわりなど熱の負担がかかるような所に使うものです。このPPSの開発や性能向上に向けたさまざまな研究開発に取り組んでいます。

開発チームなどに所属するのでしょうか?

(卒業生)
成形加工技術1グループという所に所属はしているものの、基本的にはあまりチームという感じではありません。これは弊社の特徴だと思うのですが、一人ひとり責任を持ち、テーマを遂行する形をとっています。開発においては緻密な作業やスケジュールに応じた仕事の進め方が要求されますが、そういったスキルは、大学時代に鍛えられたので、とても助かっていますね。
自分に与えられたテーマや業務に対してアプローチしていくのですが、その中には新しい樹脂の開発もあれば、工場に向けてのテクニカルサービスというものもあります。幅広い活躍のチャンスをいただきながら、やりがいを持って取り組んでいます。

DIC株式会社を選ばれた理由を教えてください。

(卒業生)
学生時代もPPSコンパウンドの機械特性の開発というテーマで研究に取り組んでいました。PPSは高温でないと加工ができない、薬品に溶けないために加工できないなど、とても扱うのが難しい樹脂であることは学生時代に体で理解していました。そういった中、DIC株式会社はPPSコンパウンドにおいて世界シェアNo.1の会社であることを知りました。自分が苦労したPPSコンパウンドで世界一とはどんなに技術力の高い会社なんだろうという思いから志望に至ったのです。学生時代はPPSを使って新たな材料を作る立場から、今は会社に入ってPPSを扱う部門に配属され、PPSそのものを作ることに。何か不思議な縁を感じますね。

卒業生はどのような進路があるのでしょうか?

(先生)
うちの研究室の場合、3分の2が大学院に進学しています。学部卒ですと営業など様々な分野に進んでいきますが、うちの研究室の場合、修士を終えた学生は、材料のエキスパートとなって、材料系の大手企業に技術職として就職するのがほとんどです。奈良さんのように、材料メーカーそのものにいく人、ポリプロピレンという車の部材にも使われる高分子の複合材料の研究をしていた学生は、車のメーカーである本田技研工業の研究所で車体の材料に関する開発をしています。しかし、学生の研究テーマがそのまま就職先の研究に直結するのは希で、むしろ大学・大学院の研究を通じて培われた「問題解決能力」や「論理的思考」などが大いに役立つことでしょう。化学は「物質」について学ぶ学問ですが、化学科では分析、合成、計算科学など物質に関する幅広い知識を習得できます。それを活かしつつ、幅広い分野での活躍が期待できると思います。
「Z会 TEIDAN 学問と職業のカンケイから、大学進学を考える本」より
※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご注意ください。

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